朝のサファリから戻って来た時にPeterがマサイ村に行きたいか?って誘ってくれた。
僕ら夫婦以外のグランマ達3人は4年前のケニアツアーで訪問して、やや商業的なマサイにちょっとがっかりしたようで断ったけど、僕は二つ返事で
「行く行く行く!」
もう是非とも行ってみたかったんだよね。
どんだけ観光化されていても日本の生活とは全く違う文化がそこにあるはず。旅の醍醐味はその土地の人間の文化を知ることだと思う。大自然も楽しいけど人にふれあうの一番楽しい。
朝食を食べてちょっと休むとPeterが迎えに来てくれた。入村するのに1人20ドルかかるそうだ。ハクナマタタ(NO PROBLEM)だ。お安いもんだ。
キャンプを出てすぐにマサイが騒ぎながら車を取り囲んで来た。ちょっとビビる。すると一人の少年が突然助手席に滑り込んだ。どうやら村への案内役らしい。
ジャンボ!って握手した手はまだ子供っぽい。彼は16歳で村長の息子なんだそうだ。
なんと英語、スワヒリ語、マサイ語のトリリンガル。お金がなくて学校を途中で辞めたって言ってたけど、ある意味語学の面では僕よりも高等教育受けてるんじゃないだろうか。
入村料はこの辺一帯に30あるマサイの村で分け合うらしい。無駄にはしないからって説明してくれた。
車で10分くらい走ると木の枝で囲まれたマサイ村に到着。外に村長が待っていて挨拶すると、みんなを呼んでくるからちょっと待っていろという。
2,3分待っていると中から男女合わせて30人くらいのマサイ族が伝統的な衣装に身を包んでお経のような歌を歌いながらぞろぞろ出て来た。もうこの時点でめちゃくちゃ感動!これで20ドルの価値はあった。横1列になると一人ひとり前に出てジャンプし始めた。
おお、これが有名なマサイジャンプ!確かに高いジャンプだ。
村長の息子(名前聞き忘れた)がデジカメで撮影してやるから一緒に飛びなさいって促してくれた。彼はデジカメの扱いも慣れたもんで、電源とシャッターのボタンも間違えずに軽々撮影してた。
歌と踊りが10分くらい続いた後は僕ら二人をみんなで囲んで座って、お祈り。
一人がなにやら唱えるとみんなで
「ナイッ」
って叫ぶ。僕らも一緒に「ナイッ」って唱えてお祈り終了。旅の無事を祈るとかなんとかいってた気がする。
お清めが終わっていよいよ入村。枯れ木でできた塀の隙間の入口から入ると中はかなり広い。この村は男が60人、女性と子供が合わせて65人の125人の村なんだそうだ。マサイは一夫多妻って聞いてたけど、女性の方が少ないのか・・。独身男性が多いのかな?
村長の息子は何でも聞いてくれ、マサイの全てを知って帰ってくれって一生懸命説明してくれた。もちろん色々聞きたかったんだけど、興奮してたのと英語がうまく話せないので聞きたいことの半分も聞けなかった・・・。
入村すると最初に火をおこすところを見せてくれた。お決まりのイベントらしいけど話で聞くのと実際に見るのは天と地の差がある。僕はこのパフォーマンスも刺激的だった。牛の糞と藁をこねたものを土台にして木を擦って火をつける。手に唾をペッペッと吐きかけて、砂を付けて木の棒を擦る。すぐに煙が出て火がついた。
毎朝こうして火をつけて種火を各家庭に配るんだそうだ。マサイが火をおこした後、お前もやってみろってことになった。手に唾をつけて見よう見まねでやったけど、全然ダメ。かなりマサイの手助けをもらって僕も妻もなんとか火を起こせました。
その後村を歩きながら、学校の話になった。マサイの学校がこのそばにあるらしく村の外の遠くの木を指して
「ほらあそこの木の下に見えるだろ?」
って言われたけど、遠すぎて全っ然見えない。どこの木?
で、その学校は貧しいからみんなの寄付が必要だと。ああ、そういうことか。寄付を求められているのか。じゃあ帰る時にちょっと払おうって思っていると、家の中を見せてあげるから家に入ろうという。
牛の糞でできた家の中は光がほとんど入ってこなくて真っ暗。おばあちゃんが家の入口でアクセサリーか何かを作っていたけど、全く僕らにかまう様子なし。日本人とか珍しくないんだろうか。見ず知らずの人が家にどかどか入って来てるのに。
家の中には火のついた木炭が置いてあってかなり暖かい。こっちが子供のベットであっちが大人用って説明を聞いて一息つくと、
「さっき話した学校のことを覚えているか?」
え?覚えてるけど・・・。つまりどうやら寄付を迫ってるみたい。真っ暗な家の中で寄付の話をされてまるでカツアゲみたいで怖かったけど、ポケットに忍ばせていた5ドルを渡して、これで良いか?って聞いたら
「充分だ。ありがとう」
って返事。正直ほっとした。もっと出せって言われたら完全にカツアゲだよね。
村長の息子は滞在中に何回も
「楽しい?」
って聞いてくれた。まだ若いから観光客からたくさんお金を巻き上げるっていうずる賢さはないのかも。彼に案内してもらって良かった。実際本当に学校がそこにあるのかどうか分からないけど、マサイの生活に役立つんだったら5ドルくらい寄付するよ。円高だし(笑)。
これでだいたい村の紹介は終わりだけど、もし良かったらマサイのマーケットを紹介するけどどうする?ってなった。これがみんなが嫌がるお土産押し売りタイムだ。嫌だったら見なくても良いよって言ったから、観光客が押し売りを嫌がってるって知ってるんだろうな。
でも僕はマサイグッズにすごく興味があったので、ぜひ見せてくれと。
マサイ村のお土産売り場は想像以上に大きかった。40台くらいのテーブルがあってそこにお土産がずらーっと並んでる。これは各家庭が作ったお土産がそれぞれのテーブルに乗ってるらしい。まずはここからスタートねって中途半端な位置からマーケット巡りが始まった。なんでここからなの?って聞くと
「僕の家の売り場なんだよ(笑)」
なるほどね。
各家庭の売り場の前に立つと店番の人が握手を求めてきて、
「ジャンボ!さっき一緒に踊ったろ?覚えてる?」
とか言われるんだけど、全然覚えてない。
で、俺が作ったとか母ちゃんが作ったとか色々説明されるんだけど、だいたいどこも同じようなビーズアクセサリーとかお面とか置物なので終盤は断る一方。
多分30分近くマーケットにいたと思う。気に入った商品を村長の息子が取り置きしてくれて、最後に木の下で交渉に入る。
演出なんだろうけど、マサイは木の枝で自分の腕に値段を書きます。僕らはビーズのアクセサリー2,3個とマサイのお医者さんの彫り物とマサイ族のママの彫り物とかヘマタイトのネックレスなど10個弱選んだ。
最初に向こうが提示した金額は200ドル。
そうかそうかとりあえずじゃあ10分の1でいってみるか。公園の入口のマサイは50分の1に値下げしたけど、20ドルなら大満足だし。と思って僕も自分の腕に数字を書こうとしたら、
「お前は地面に書け」
って諭された(笑)
で20って書くと、みんな引きつった顔。あれ?なんかおかしいな。でも最後には譲ってくるだろ。と思ったら50以下には出来ないという。またまたー。じゃあ揺さぶりでいくつか選んでこれとこれはいらないって言ってみた。
そしたらあっさり、そうかしょうがないな。ってことに。あれ?もっと食いついてこないの?どうも想定と違う。
じゃあ物々交換だ。ボールペンや時計と交換したがるって聞いてたから、かぶってた帽子を差し出してこれと20ドルでどう?って切り出すと
「マサイはこんなのかぶらない」
ってあっさり却下。
ウソー。マサイでもかぶってる人いるじゃん。結構便利だよ?
結局20ドルで置物2コにまとまってしまった。商談終了となった時にヘマタイトのネックレスを売っていた家の人が
「これ10ドルでどう?」
って最後の売り込みをしてきたので奥さんが購入。
村長の息子もビーズアクセサリーを持って
「これウチの商品なんだけどやっぱりダメ?」
って控えめに聞いて来たのに断っちゃった。ちょっと悪いことしたかもなあ。
ゴメンネって謝ると
「全然問題ないよ。気にしないで!それより今日は楽しめたか?」
って笑ってくれた。
ダンス、歌、火起こし、家の紹介、お土産セールス。だいたいどこのマサイ村訪問も同じような流れみたい。確かにマサイは着実に観光化されているんでしょう。
携帯を持ってるマサイもいる。今はもうライオンと戦うこともなく、動物を保護してそれを目当てにやってくる観光客からの収入をあてにしてるって村長の息子もはっきり言ってた。
でも僕はその観光化がマサイの価値を下げているとはちっとも思わない。お土産の交渉が終わった後に、とあるマサイが大事にしまっていた旧札の20ドルを差し出して10ドル2枚と交換してくれと頼んできた。旧札が使えなくなるのを心配しているのか、単に新札が好きなのかわからないけど、まだまだ貨幣制度がマサイに浸透しているとは思えなかった。そんなマサイにやれ入場料だ、寄付だ、お土産代だといってお金を落としていくことが正しいことなのかはわからない。もしかしたらお金を手にしたマサイの生活を狂わせてしまうのかもしれない。
それでも僕の頭にはフェアトレードという言葉がよぎった。もしかしたらマサイにとって1ドルは100ドルくらいの価値があるのかもしれない。でも僕がそこに相応の価値を見出せたなら、気持ちよく支払っていいんじゃないか。
本当はお金の使い道とか、電気は全く使っていないのかとか携帯の普及率とか、マサイの近代化をもっと聞きたかった。
僕たち二人だけの為に大勢のマサイが対応してくれたっていうのも大きいのかもしれないけど、もの凄く良い経験だった。
お土産を買わないと機嫌が悪くなるマサイもいるらしいけど、あの歌や踊りを見るだけでも訪問する価値があると思いますよ!
下の写真はマサイ村で買ったマサイ族のドクターの彫り物。左手に持ってる杖は最初付いていなくて、
「この左手の穴は何?」
って聞いたら、ああ、これは杖を持つんだよ。今きみの為に杖を作ってあげる。と言ってその辺に落ちてる枝を拾ってボキっと折って「杖」を作ったのでした(笑)。
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